困難を乗り越えた軌跡。(後編)

私「この思いは、平安京を作るときに活かされるんだよね。さっきも言ったけど、平安京は、平城京とは全く違った考え方で条坊が引かれているんだって」

長男「どんな風に?」

平安京(一部)の条坊の道路と宅地の取り方をを模式的に表した図(図3)

私「平安京では、決まった道路の幅をとって、それから決まった広さの宅地面積をとって、それからまた決まった道路の幅をとって、それから決まった広さの宅地面積をとって・・・っていうように作られている(図3)ということが、研究と発掘調査で明らかにされたのね」

長男「はー。じゃあ宅地面積は変わらないんだ。道が広かろうが狭かろうが」

私「そう。この話知った時ね、古代の人の執念みたいなものを感じたんだよね」

長男「平城京で、ある意味失敗した部分を、平安京で取り返したってわけか」

私「失敗と感じていたかどうかはわからないけど、まあ平安京がどう変わったかってところをみれば察せられるよね。これは改善の余地がある、次に都を作るときは、宅地面積が変わらないような方法で作ろうぜー!って申し送ったってことかもね」

長男「昔の人も、失敗を肝に命じてなんとか変えようとしたんやな」

私「しかも世代を超えて、だからね」

長男「そういうことになるな」

私「昔の人の気持ちがなんとなくわかって寄り添ったような気になるっての、わかった?」

長男「わかった、ような気がする」

二人で、説明に使った平城京と平安京の区画を描いたものを眺めました(図4)。

左が平安京(一部)・右が平城京(一部)の条坊を模式的に表した図(図4)

いにしえの人が何らかの困難であったり不都合であったりすることを乗り越え改善させた軌跡が見えると、共感が生まれ、歴史に対しても土地に対しても愛着が湧くような気がします。そんな、逆境に挑んだ人々の姿は、現在の生き方にも勇気を与えるのではないでしょうか。

考古学は、地中の痕跡からこのようなことも明らかにしているのです。

私「でね、この、デザインとしての平城京条坊チェックと平安京条坊チェック、最高だと思うわけよ。見るたびに古代の人が困難を乗り越えたことを思い出せる。私もがんばろうって思える。

デザインとしての条坊チェック(左が平安京・右が平城京)

だから私は何かグッズにしたい。半面づつ手ぬぐいにするとかどうかな。平城宮条坊チェック側の柄を出して持つときは逆境から抜け出す力が欲しいとき、平安京条坊チェック側の柄を出して使うときは今の自分に安住するんじゃないぞって気持ちを持つとき、とかさ。平城京条坊チェックと平安京条坊チェック、あなたどっちが好き?」

長男「そこはオレどうでもいい。勝手にして」

《引用参考文献》

平安京の条坊町割の地割方式は、藤原京・平城京のそれと全く異質である。第一に京の総南北長・総東西長がいずれも令一里の倍数と関係しない。京の条坊町割を令一里およびその1/2、1/4の長さの単位で画一的に分割していないのである。第二に条坊町割を、町(坪)の広さと道路幅をひっくるめて道路間の心々距離として、機械的に均等に設定していない。この二点から導き出せる平安京の条坊町割の地割方式の基本的な特徴は、京の全体が京を構成する町や道路などの諸部分の集積の結果に過ぎない、ということである。まさに延喜式の記載方法に示される条坊町割の理解のしかたによって、平安京の地割が計画されたのである。藤原京・平城京では、京の諸部分は基本的には京の全体規模から分割され析出されたものであった。全体から部分を割り出す地割方式と部分を集積して全体を形成する地割方式との間には、正反対の原理上の差異が存在するのである。

稲田孝司1973「古代都宮に置ける地割の性格」『考古学研究』第 19号第4巻 pp26-45

最後に平安京と平城京の条坊制の形態の違いについて触れておく。前述のように平安京の宅地である町は条坊道路の規模にかかわりなく、どの場所でも四十丈四方の同じ大きさである。それに対して平城京では、一坊を道路心から道路心とし、その長さを百八十丈と決め、それを四分割した四十五丈ずつに道路の中心を通し、道路規模の半分ずつを宅地側に割っていく方式を取っている。このために、宅地である坪(平安京では町)の大きさが道路規模により左右されることになる。

辻純一2011「第二部 第一章 条坊制とその復元」『平安京提要』pp103-116
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金田あおい

金田あおい

代表・デザイナー時代意匠考案 藍寧舎
大学・大学院で考古学を学んだのち、考古学や歴史学が持つ肯定的な側面に焦点を当てたデザインをしたいと専門学校へ。現在は、デザイン製作・ワークショップ・トークイベントなどをおこなう、時代意匠考案 藍寧舎(らんねいしゃ)として活動しています。

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