それ、なんでわかったの。〜愛知県埋蔵文化財センターでの会話から〜

先日愛知県埋蔵文化財センターに仕事の打ち合わせでお邪魔した時のことです。

ちょうど2Fで「秋の特別公開2019」を開催中といのことで、埋蔵文化財センターの研究者である樋上昇さんと堀木真美子さんに案内していただきました。

会場では、朝日遺跡から出土した赤彩壺や壺形土器、勾玉や管玉、手焙形土器が展示されていました。朝日遺跡は愛知県清須市、名古屋市西区にまたがる弥生時代を代表する遺跡の一つです。さすが有名遺跡だけあって、遺物も立派なものが展示してありました。一般の方でも見学することができますので、現地(埋蔵文化財センター2階)で受付にお声をかけてみてください。

今回の展示の中の一つ、壺形土器には、底部に近い側面に3センチほどの穴が開けられていました。

私「祭祀用に使われたものでしょうか?」

堀木さん「という話もあるけれど、お墓に供えられていたものだから、水が溜まったら困るというので穴を開けたのかもしれないですよね。蚊がわくと嫌ですしね」

私「確かに!蚊がわくと嫌ですね。穴が空いている位置も低いし、水が抜けやすそうです。その説、面白いですね」

********************

私「……ってお話をしたんだよね」

長男(高1)「考古学って、わからないものをなんでも祭祀にするような印象あるんだよな」

私「そこをどれだけ科学的に説明できるかだろうね」

長男「弥生時代とか、もっと現実的な生き方してたんじゃないかと俺は思うけど。それこそ水が溜まって蚊がわくと嫌だなとか」

私「例えばこれは日本の話じゃないけど、祭祀につながるかなあと思って話すね。とある洞窟の中で埋葬場所に花が手向けられていた可能性があるって明らかにされた例があったみたい」

長男「それ、なんでわかったの」

私「花粉分析で。埋葬遺体の近くで大量の花粉粒がまとまって見つかった例があって、洞窟の奥深くだし自然にはありえないことだっていうので」

長男「死者に花を供えられていた風習があったことが明らかにされたってこと?」

私「そういうことになるね」

長男「そんな分析の方法があるのか。どれだけ信憑性があるのかが気になるな」

様々な条件、前提によって導き出される結果が変わってくる自然科学分析。研究の争点である根拠については、慎重に精査する必要があります。


《引用・参考文献》

特定の試料の中に、単一種の花粉粒が発見されたのである。しかも、十個とか百個とか、かたまって見つかったのである。ある場合には、花粉は葯(花粉をつけている袋)の内部に入り込んでいるような形になって見えた。ルロア=グーラン夫人は推論する。自然のままであれば、洞窟の奥深くにこのような形で存在することは全くありえない。第一に、鳥や獣が、そのような形に花を運ぶことはまず考えられないし、第二に、埋葬場所に鳥や獣がそんなものを置くわけがない。最後に、たいへん大きな美しい花を咲かせるタチアオイは、他とは離れて一本一本ばらばらに生長する。それゆえに、彼女はこう結論する。最後の氷期に、誰かが野山を歩きながら死者を悼んで花を集めたのだ、と。墓に隣接する部分の土壌からは、花の形跡は発見されなかった。この事実が、さらに、この発見に対する推論の決め手となったのである。

佐原眞1993「花を飾る文化」『考古学の散歩道』田中琢・佐原眞著 pp116 岩波書店
The following two tabs change content below.
金田あおい

金田あおい

代表・デザイナー時代意匠考案 藍寧舎
大学・大学院で考古学を学んだのち、考古学や歴史学が持つ肯定的な側面に焦点を当てたデザインをしたいと専門学校へ。現在は、デザイン製作・ワークショップ・トークイベントなどをおこなう、時代意匠考案 藍寧舎(らんねいしゃ)として活動しています。

コメントを残す

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

CAPTCHA


Scroll to top