痕跡からわかること

私は今年度、四男の保育園の卒園記念品係を拝命しています。

子どもたちが描いたお気に入りの絵を集めてバッグにプリントするため、現在、各家庭で選んでもらった絵をデジタルトレースする作業を進行中です。

子どもたちの絵には、サインペンが紙との摩擦でつっかかった跡や、迷ってインクが溜まったと思われる箇所もあります。しかしそのどれもが、子どもたちの園での生活の一場面であり、大切な思い出かつ記録の一つとなっていて、愛おしいものです。

どの子のペンの動きもできるだけ忠実に再現したい、そんなふうに思い、時間をかけてデジタルトレース作業を進めています。

その中で気づきました。

子どもたちがどのような順番で線を描き、一つの絵に仕上げていったのかが、観察することによってわかってくるということに。

これ、考古学の研究にも通じますよね。

考古学では「切り合い」と呼んでいますが、遺構が重なり合っている場合、新しい方が古い方を壊しているので、作られた順番がわかります。どちらの遺構が新しいのか古いのか、詳細な観察を行って、図面上で表現するのです。

遺物も同様です。
例えば、石器は、やはり新しく割った面が、古い面を欠けさせるので、打ち欠いた順番がわかります。土器の表面は、叩いたりこすったりする痕跡の重なり方で、製作者がどのように動いてその土器を作っていったのかがわかります。これらによって知ることができる技術の共通性や差異によって、作り手や集団の個性、技術の変遷を考えていくことができます。

そういった細かな観察を通して人間について考えていく学問が考古学といえるかと思いますが、対象となるのは毎日のようにふれあっている保育園児たちも例外ではありません。彼らが絵を描く姿を思い浮かべながら、どんな動きでペンを走らせたのか、そしてその動きにはどんな気持ちが反映されているのか、痕跡から想像する日々がまだしばらく続きます。

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金田あおい

金田あおい

代表・デザイナー時代意匠考案 藍寧舎
大学・大学院で考古学を学んだのち、考古学や歴史学が持つ肯定的な側面に焦点を当てたデザインをしたいと専門学校へ。現在は、デザイン製作・ワークショップ・トークイベントなどをおこなう、時代意匠考案 藍寧舎(らんねいしゃ)として活動しています。

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