国が配布した布製マスクに関する一考察(その10)

昨日までは、配布された布製マスクの実物について、手元にある3セットを比較し、その構成を見てみました。

今日は、このブログを書き始めてから多くの方に追加資料をいただきましたので、再度チラシの類型から、主に配布の時期について、現状で言えることをまとめてみたいと思うのです、が!

実は昨日、Twitterのフォロワーでもある友人から東京都品川区に配布されたA-1類が届きましたのでご紹介させていただきます。本当にありがとうございます。私の憧れの、大きな「密」のデザインです。想像していた以上に「密」の字が大きい!フォー!ああ、これが欲しかったー!!

A-1類には、「厚生労働省」とは別に「首相官邸」の文字が入っているんですね。B類にはない記載です。なぜB類では消失したのか、気になってしまいます。

また、私の手元にあるB類とは紙質が違うことがわかりました。いただいたA-1類は上質紙で、連量90kgくらいです。B類はマットコートだろうと思います(70kgくらいのと90kgくらいの2種類がありました)。紙質の違いははじめてだったので興奮しました。最初期に配布された貴重な資料。比較対象として大切に扱わせていただきます。

では、いよいよ配布時期の図を見ていきましょう。みなさまからの資料を追加して製作したものがこちらになります。

2点、デザインを修正しています。

まず1つは、A-1類の表紙最下部の色です。読者の方のご指摘により、A-1類は紫というよりも濃紺に近いということがわかりました。写真だけで判断してしまったので当初紫としましたが、実物も確認いたしましたので訂正させていただきます。
もう1つは、配布場所・時期の文字の色を、それぞれの類型を見分ける目印となっている表紙最下部の帯の色にそろえました(最初からそうしていればよかったんですが、思い至らずでした)。こうすることで、3つの類型の配布時期を視覚的に捉えやすくなったかなと思います。

6月27日のブログ執筆以降、東京都・福岡県・佐賀県・沖縄県・神奈川県・愛知県・福島県・宮城県(順不同)の資料が増えました(7月1日現在)。ご協力くださった皆さん、本当にありがとうございます。漏れがありましたらご指摘ください。

これにより、更にわかったことがあります。

A-1 類は、佐賀県にも配布されていました。佐賀県は、特定警戒道府県ではありません。先に追加された資料の沖縄県と合わせて興味深い事例だと思います。A-1類の配布は、全国に先んじて緊急事態宣言が発出された「一部の地域」に含まれない地域にも配布されており、さらに、特定警戒都道府県に含まれない地域にも配布されていたことがわかりました。優先順位の明確な基準がどこにあるのか、いや、基準があるのかどうかも、今のところわかりません。

A-2類に関しては、宮城県多賀城市でB類と同時期に配布されていたものがありました。政令指定都市ではない市で別類型のものが配布されていた例ははじめてです。混在の理由はもちろんですが、割合なども気になります。そして、多賀城市のB類は、奈良市ではない場所で確認されたはじめての熱圧着の外袋でした。類型をまたぎながら何回にも分けて供給された可能性も視野に入れておく必要があるかもしれません。

また、B類が配布されていた茨城県八千代町に注目してください。配布時期が、予想されるチラシの製作開始時期と非常に近くなっています。これから言えることは、B類のチラシの製作が、緊急事態宣言解除を見越して、解除されるよりも早い段階から行われていたのではないか、または、首都圏1都7県の緊急事態宣言が解除されるのを待たず、それ以外の地域の緊急事態宣言が解除になった段階ですぐに開始されたのではないかということです。いずれにしても、当初予想していた製作時期よりも遡る可能性が出てきました。
また、B類にしか掲載がない“「新しい生活様式」の実践”というのがいつから言われ始めたのか、気になっていたので調べてみました。5月4日の専門家会議を受けて5月7日に厚生労働省が発表したようです(https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000121431_newlifestyle.html)。このことから、B類の製作がどんなに早かったとしても5月7日より遡ることはないと思われます。

B類に関しては、もう一点注目したいことがあります。政令指定都市である大阪市での配布が遅く、異様に感じられると書きましたが、新たに同じく政令指定都市で、感染者の数が多かった地域である神奈川県横浜市でも、6月以降に複数箇所でB類が配布されていたということがわかりました。このことから、A類を感染拡大地域に優先して配っていたわけではないようだという見方が強化されました。逆に捉えると、感染が拡大した地域でB類が配布されているのは、当初マスクの配布どころではなかった状況を反映しているような気がしなくもありません。

A類の段階でマスクを配りきることができなかった→B類が製作されるに至ったのでないかと推測していたのですが、実際に政府は5月中でマスクの配布を完了する予定だったようです。7月1日掲載のニュース記事(https://news.yahoo.co.jp/pickup/6364084 )に書いてありました。「全戸配布は4月17日に始まり、計約1億2200万枚が各戸のポストに届けられた。当初は5月中に配布を終える予定だったが、作業が遅れた。」
作業が遅れなかったら、B類は生まれなかったのかもしれないですね。

ここで、ある地域にどのくらいA-1類・A-2類・B類が配布されていたかということを類推する資料を得ることができましたので公開します。沖縄県那覇市で、不要なマスクの回収を行っているNPO法人地域サポートわかささまに、6/29日時点で届いているマスクのチラシ3類型の内訳を教えていただきました。

資料数=255パック

不要ということで回収されたマスクなので、配布された数を反映してはいません。また、回収が始まった時期に、すでに届いていたものを開封してしまっていて、送りたくても送れなかったという場合が想定されるので、早くに配布されたものほど届け出が少なくなる可能性があります。それでも、沖縄県の中だけで3類型が見られる(配布は都道府県単位ではない)ということは間違いありません。突撃取材に快く応じてくださったNPO法人地域サポートわかささまに、この場を借りて深くお礼申し上げます。

おわりに

チラシのデザインの変化、パッキングされた布製マスクの構成を検討した結果、国が配布した布製マスクからみた物質文化変遷の一様相を垣間見ることができたように感じます。配布された順番や分布域に関する謎は多くありますが、チラシのデザインには3類型あり、それが緊急事態宣言発出から解除までの経緯を反映しながら変わっていったことが読み取れました。また、資料は少ないながら、複数の会社によって製作されたマスクについて、その仕様の共通点から、どこに重点を置いて製作されたものだったのかを想像することができました。

今回、考古学的な手法を用いて分析を試みましたが、この事例は直近に起こったことなので、得られた仮説をもとに、実際はどうだったのかという背景に迫る手段が残されています。これを機に、これからも国が配布した布製マスクの検討を進め、可能な範囲で答え合わせができたらと考えています。続報があり次第、またブログに掲載させていただきます。今後も資料を収集していきたいと思いますので、お手元にマスクをお持ちの方は、ぜひマスクチラシの金田編年3類型(A-1類・A-2類・B類)のどれだったかと、届いた時期、所在地を教えてください。

一考察を、10回にわたって連載させていただきました。想定よりもだいぶ長くなってしまいましたが、最後まで読んでくださったみなさん、資料を送ってくださったみなさん、考察の糸口を示してくださったみなさん、本当にありがとうございました。心よりお礼申し上げます。

2020.07.03 金田あおい

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金田あおい

金田あおい

代表・デザイナー時代意匠考案 藍寧舎
大学・大学院で考古学を学んだのち、考古学や歴史学が持つ肯定的な側面に焦点を当てたデザインをしたいと専門学校へ。現在は、デザイン製作・ワークショップ・トークイベントなどをおこなう、時代意匠考案 藍寧舎(らんねいしゃ)として活動しています。

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